最近のコメント
アクセスカウンタ
タグクラウド

スポンサーサイト

ミリタリーブログ ( )

上記の広告は1ヶ月以上記事の更新がないブログに表示されます。
新しい記事を書くことで、こちらの広告の表示を消すことができます。  

Posted by ミリタリーブログ at

2019年06月23日

サージェントに面会しました

市 (2019年06月23日 15:35) │Comments(12)訓練


広大なるキャリフォニア
日本より20%も広いといわれる

西に走る

4時間のドライヴです


ここはモロベイにあるナショナルガードの基地です

ケンシの野営訓練が終わり、この日は休み、そして翌日から別な訓練に入るのです。この日はファミリーの面会日というわけなのです。

「面会なんか行かなくてもいいよ」
と、ダダは言いましたが、母親はソーはいきません。大切な息子が寂しがっていないか心配で心配で・・・

「これしきで寂しがるようでは適性がないのよ」

訓練所ではランチタイムの真っ盛りでした。親達にも焼きたてのハンバーガーがふるまわれました。美味しいです。そこにケンシロウがやってきました。大いに元気です。



どうだい? 寂しくなかったかい?

ぜーんぜん!!

ホームシックになったりしない?

ボクは平気、でも10人くらいは泣いてこまったので親が迎えにきたよ。

来週はなにを学ぶの?

ハッカーになる勉強だよ。

それは凄すぎるな〜

来年も来ていい? ベレーにチャレンジしたいの。

もちろんだよ。



ジュンは黙って眺めていました。

二年後に入る決心を固めたようです。

そのことを指導員に告げると、うまく行けば来期からカデットコォに参加できると。校区によっては参加資格が改正されるらしいのです。

将来ミリタリーに入るかどうかはともかく、夏休みのうちの二週間も家にいてネット中毒で心を腐らせているよりはテントで野営をしながら規律正しい生活をしながら多くの体験と知識を身体と心にダウンロードできるなんて親としては素晴らしく嬉しいことです。

もし、これで息子が自分の情熱を捧げる進路を見つけてくれたら、父としては最上の喜びとなります。進路が決まれば旅立ちができますからね。旅立ちが決まれば大きな成長が始まりますからね。

さすがに疲れたケンシロウは6時には玄米棒とトンカツを食べてコテンと眠り込んでしまいましたよ(^O^)

それにしても、アメリカのシステムは凄いっ!!!

by ハッピーな父

  


Posted by 市 at 15:35Comments(12)訓練

2019年06月23日

続 新たなる挑戦

市 (2019年06月23日 00:11) │Comments(12)ビアンキカップ
みなさん、おはばんよう!!
何か心の琴線に触れるものがあったのか、あのマロンパが記事をリライトしてくれましたので載せますね♪ 
あ、もちろん琴線抜き・・もとい、金銭抜きでやってもらえました(^O^)
ありがとマロンパ!!

この記事を読んで、
勝っても負けてもそれで終わりではなく、どれだけ続けられるかが自分を磨くということにつながるのだと想いましたよ。









新たなる挑戦

BY イーチ ナガタ

焦る気持ちでマリポーサに走った。ビアンキカップまであと40日。新しいナウリンのオートに慣れるには決して充分な時間ではない。40日間といっても、じっさいにはそんなに練習できない。いくら仕事をサボッても20日間あるかどうかだ。ミッキーの私有射撃場のあるマリポーサまではドゥライヴして3時間もかかる。毎日一回、早朝練習ができるくらいの距離だったらどんなによいだろうと思う。 とりあえず3日間の休みを奪った。逃れるようにランドクルーザーでひた走る。マリポーサに通じるワインディンロードにさしかかると、もう胸の動悸が高い。新たなる挑戦の悦び、そして湧きあがる充実感。タマは2千発も造った。とにかく沢山撃ちたかった。腕のケンショー炎が悪化するギリギリのところまで撃とうと思っていた。昼すぎにマリポーサに着いた。もどかしい気持ちでターゲットをセットし、はやる心で10本のマガズィンにタマをこめる。買ったばかりのピカピカのウィルスンマグだ。やっと撃つ用意ができた。もう充分すぎるほど興奮し続けたので、頭のどこかに疲れさえ覚えていた。やるべきことが、なにしろ多い。銃の不安をはじめ、シューティンのテクニックがなにひとつ確立できていないという焦りもある。基本となるドゥロウ&シュート。バリケイドの対応。プローンのための技術━━そういったものが明確に観えていない。リヴォルヴァのテクニックがそのまま通じるとはいえ、微妙な技の変化がオートには必要なのだ。まずはプラクティコォの10ヤード。やさしい始まりだが、直後に地獄がある。3秒2発。4秒4発。そして恐怖の左手撃ちは8秒6発。この12発をXリングに撃ちこめるまでは動かないと決めていた。案ずるよりは安し。ダッダン ダッダンという2回のダブルタップで3回手こずったがあとはすぐにできた。ウィークハンドは苦しいが、想ったよりも楽だと感じた。だが、プローンでの反動がリヴォルヴァとは少しちがった。リヴォルヴァはバンと瞬間的にもどるのに、オートはブルルルと上下動が長い。これは15から50ヤードまでを徹底的に練習しなければならないと思った。しばらく、はまって撃った。ナウリンがジャムった。スライドがもどるショックでハンマーが落ちてしまったのだ。ハンマーとトゥリガーとのコネクションに異常があるということだ。トゥリガープルを軽くしすぎたのが原因だ。これは直る。だが、そのあと、今度はストーブパイプがおこった。銃なのか?タマなのか?原因が判らない。500発ほどの内、3回のジャムだった。途方にくれた。火薬とブレットの研究、そして銃のメカニズムに関する勉強も必要だと痛感した。オートシューターにはガンスミスという学科も必修科目なのだ。それにしても、アッサリとジャムったものだぜい。かなり勉強して自信をもって造ったタマなのに。この世界、決して甘くない。しばしボーゼンとした、が気をとりなおしスプリングのガイドロッドを磨きなおし、スライドストップのスライドにタッチする部分を軽く落としたりしていた。そんなところにミッキーがやって来た。
“あのなイーチ、チャップマンレンジを4日間リザーヴできたから、オレは練習に行きたいんだ···どう思う?···”
ミッキーは、そう言った。
“なに?ビアンキカップが開催されるレンジを借りて、そこで練習だって?”
“そうだよ、イーチが一緒に行ってくれたらどんなに助かるか···でもムリだろ?”
“···行くっ! 行くぜいっ!”
今年、パワー全開で跳ぼうというのは自分だけ···だとは思わなかったが、この長年の親友もまた大いなる跳躍を期している。ワシとミッキーは見つめ合った。その発想と実行力。これこそ「友」だ。
“やろぜ! 頑張ろぜ!”
“フルスロットルで跳ぶんだ!”
で、コロムビアに飛んだ。

☆バリケイド☆
ハイウェイを降りて、ジャリ道を3分ほど走るとチャップマン アカデミーのレンジ。カップシューターにとって、この射撃場には特別な思いがある。拳銃世界一を争う激闘の地だから。この場所は磁場が歪曲し、気圧も重力も狂っている。空気はジェラティンのように濃密で、視覚は屈折し、金縛りもおこる。このレンジに向かうだけで血圧と動悸は上がり、決して平静ではいられない。この日も、ワシとミッキーはドキドキしながら土煙りのジャリ道を走った。ところが、レンジはモヌケのカラ。シーンと静かでガラーンとしていた。ジョンというレンジマスターが番をしているだけ。旗も無ければクルマも人も居なかった。そこは、磁場も重力もまったく正常だった。メンタル ディストーション━━人間の脳が織りなす複雑な観念歪曲。精神環境によってめまぐるしい変化をおこす感覚世界。すごいものだと思った。試合現場で練習できる嬉しさを味わいながら、まずはバリケにとりかかる。バリケはオート組の頭痛のタネと言われている。ムーヴァーがやさしくなるかわりにバリケが難しくなると言う。とにかく、ワンコース48発を撃った。なるほど揺れる。とくに左右の揺れがひどくてエックスリングが捕まらない。ドルルルルンとダットが揺れ続け、停まるのを待って撃つとオーヴァータイムしてしまう。とくに35ヤードがまったくダメ。12発の内3発も失点した。そこで作戦その一。ナウリン カスタムはスライドの外側がシュラウドで覆われている。バリケはそれを握って撃つ。その筒ッポの両サイドにパテをこねて伸ばし、35ヤードのバリケにゆっくりと押し当てる。ターゲットのセンターを狙い、ソッと銃を離した。パテが乾くのを待った。セメダインのエポキシパテは一時間もするとカッチカチになる。そして35ヤードを撃ってみた。バシッとバリケにナウリンをセットするとまるで自動式のようにダットがエックスリングにのった。ドインドインと撃つ。揺れは前回の半分というかんじ。作戦成功。ターゲットをチェックするとテニスボウルくらいのグルーピンに収まっていた。が、その弾痕群は右上5センチのところにあった。バリケではこういう不思議な飛び方をする場合が多い。そして、ある日突然にグルーピンが移動したりもする。バリケに関してはグルーピンをキープする訓練をしておいて、試合の前日にスコープのクリックで調整しようと決めた。

☆プラクティコォ☆
10ヤード 
3秒2発 スタンディン
4秒4発 スタンディン
8秒6発 ウィークハンド

15ヤード
4秒2発 プローン(伏射)
5秒4発 プローン
6秒6発 プローン

25ヤード
5秒2発 プローン
6秒4発 プローン
7秒6発 プローン

50ヤード
7秒2発 プローン
10秒4発 プローン
15秒6発 プローン

計48発。これがプラクティコォの全容だ。両手首を肩よりも高く挙げて用意。ターゲットがバルンと回転してこっちを向く。腰のホルスタから銃を抜いて撃つ━━ これがルールだ。プローンがイヤなら立射でもよい。プラクティコォはPRACTICALというスペルで、プラクティカルと書いてもよいのだが、プラクティコォと発音する人も多い。日本のテレビがビアンキカップを紹介したとき“これはプラクティスをマッチにしたものです、だからホラネ伏せたり左手だけで撃ったりするでショ?ガハハのハ”と、解説者が言っていた、が、それはマチガイ。彼はプラクティコォが【実際的 実用的】だという意味なのを知らなかったのだ。ドゥロウ&シュート。2連のダブルタップ。高速プローンと連射。50ヤードの精密狙撃。このコースには実戦のための必殺射撃の技が秘められている。コンバットシューター、レイ チャップマンが設定した素晴らしいコースなのだ。プラクティコォで全弾48発を手のひらサイズの10点リングに撃ちこめるシューターは多くはいない。磨き抜いた技に体力と気力。これらが一致しなければクリーンはできない。チャップマン アカデミーでの作戦その二はプラクティコォのグラウンドチェック、つまり地面の検査とその対応だった。プラクティコォは10ヤードの12発が終わると、あとはプローン攻撃。それだけに地面のコンディションを熟知したかった。屋外のレンジは完全な平地ではない。傾斜やうねりが多少あるものなのだ。とくにチャップマン レンジはそれがすごい。中華鍋の底を傾けたようになっていて、50ヤードになると頭に血が昇るほど傾斜している。で、ここで発見があったのだ。25ヤードの仰角にグリップを設定すると、50ヤードもそのままピッタリなのだ。“よしよし······”ワシは座りこんだね。そして、グリップの底をゴシゴシと、入念に削ったよ。来てよかったなぁ······。

☆フォウリンプレイト☆
直径8インチの鉄板が6枚ならぶ。
10ヤード6秒 15ヤード7秒
20ヤード8秒 25ヤード9秒
━━━で、それらを撃ち倒す。フリースタイルなので立ってもよし、座っても伏せてもよし。ただしプレイトが倒れなければダメ、という単純で素朴な競技。ビアンキカップ4種目競技の内、易しいほうの競技、だがしかし、手ごわい相手。タイムリミットは短くはない、とはいえ一瞬の油断でミスターゲットする。とくに怖いのは初弾。銃は、朝の第一弾が難しい。コールドスタートから放つ最初のストリングの怖さは経験を積むほどに判ってくる。10ヤードの6枚を6秒で撃ち倒す、というのは初心者でも一週間練習したらできるようになるというほどに楽なことだ。でも、それが何時でもどこでも、どんな環境でも、となると、とても難しい。とくに、ビアンキカップのような大舞台、それも優勝をかけたプレイト撃ち、と、なれば、身体が硬直してトゥリガーをスムーズに引けなくなるのだ。10ヤードのスタンディン(立射)の難しさは、それが初心者にもできるほど易しいところにある。楽だから巧い者が練習でいくら撃ってもミスショットがなく、ついには25ヤードまで退って撃ち、それでも巧く撃ててしまう。だからといって安心して試合に出るとミスがでる━━そういう不安定が射撃世界の常なのだ。だから、確率を高めるために10ヤードもプローンに入る。ところが、チャップマン アカデミーの10ヤードラインは、荒々しいゴロタ石を敷きつめた「地獄のジュータン」なのだ。石のトンガリにグリップが乗ろうものなら嵐に揺れる葉っぱも同然。グラングランと揺れてターゲットは捕まらない。だから地面に頼らずにスタンディンの心で撃つ。これがマスターできれば10ヤードはこなせる。日本のシューター達は、身体の敏捷とテクニックを武器にして、10ヤードプローンで勝利を重ねてきた。だが、オートはなぜか撃ちにくいという印象だった。ズッシャン、ズッシャンとスライドが前後運動し、ダットのもどりが遅い。10ヤードプローンの速射がつらいのだ。元祖高速プローンのワシでも、やっとでクリーンなのだ。これならばスタンディンの方が安全だろうと思った。そこでスタンディンで撃った。8インチのプレイトを10ヤードという近さから━━当然よく当たる。右手ワンハンドでも当たるし、ウィークハンドでさえよく当たった。でも、ワシは怖い。やはりオート用のプローンを開発してチャレンジだ。

☆ムーヴァー☆
ビアンキカップの開催中には決して入らない場所にワシはいた。そこは、ムーヴァーのコントロールブースだった。そこに座ったワシはコントローラーを操作しながらミッキーが撃つのを見守っていた。“···長いことカップを撃っているけど、こんなアングルからムーヴァーを見たのは初めてだなぁ···なんだか嬉しいなぁ···” 素直に喜んでいた。「ムーヴァー」とはムーヴィング ターゲットのこと。引っ越し屋のこともそう呼ぶが“動くヤツ”というかんじだろうか。18mを6秒間で走るターゲットを10と15ヤードで6連射、20と25ヤードでは3連射で撃つ。48発の弾丸を手のひらほどの10点リングに撃ちこめれば勝ちだ。ところが、この走り屋はモーレツに手強くて、コイツに関しては作戦も陰謀も、なにも役立たない。堂々と対峙し、ガップリ組んで反撃のスキを与えず、グイグイと強力に寄り切るだけが唯一の退治方法だ。どう撃つか? 方法論なら 簡単シゴク。銃を抜き、ダットをターゲットのセンターに乗せ、エックスリングから外れないように気をつけながら追い、トゥリガーを滑らかに引く━━ たったそれだけ、そう!それができればムーヴァーには勝てる。 銃を抜き、ダットをセンターに合わせてターゲットを追うことは、そう難しくない。ダガだがダガ“トゥリガーをスムーズに引く”ということがメチャコンナンのコンコン難なのだ、よ。強敵からこそ学ぶべし。ワシのシューティンは、このムーヴァーとの出合いで変わった。他人のできることなら自分もできる。自分にできることは他人もできる。だから悲観的な生き方はいけないし、イバッた態度もバカなこと━━そんな考えで生きてきた。だから腰をすえて努力し、プレイトに勝ち、バリケに勝ち、プラクティコォにも勝った。なのに、このムーヴァーは違った。強いっっ!圧倒的に強いのだ!努力も尽力も訓練も、強い意思も熱い心もムーヴァーは決して受け付けない。冷酷無比の絶対無敵なのだ。 なんとワシは13年間も連続してムーヴァーにかかって行き、13回も土俵の外に投げ飛ばされたのだ。そして悟ったことは、自分の無能、非力、愚かさ━━そういう事実が厳然としてあるということだった。そして、才能というものの存在も知った。シューティン界で一番のトゥリガーフィンガーを持ったシューター。それはミッキー ファアラだ。その男が目の前で3回続けてムーヴァーを、苦も無く倒した。そしてワシも撃った。3連敗。今だ暗闇。真っ暗だ······。

☆撃った撃った、撃ちまくった!☆
ワシの腕はケンショー炎だ。腕がズキズキと、いつも痛んでいる。重いものを持つとしびれ、寒くなると棒の腕になる。とくに銃のような鉄のカタマリを速く抜いてバシバシと撃つなんてのはモッテのホカというヤツ。300発も撃つと腕の中はナマリが充満し、危険なほど重くなる。翌日になると指がイモ虫のように膨れて握力が消える。銃を握るとフカフカで、まるで重金属製の綿をつかむような感触なのだ。だが、なんと今年はコロムビア特訓で2600発も撃てた。たった四日間のあいだにだよ。腕が痛まなかったのではない、モーレツに痛んだ。だが、握力があまり低下しなかったのだ。銃を握る力があれば練習はできる。頑張ろうという気持ちが強いと痛みは忘れる。今年のワシにはコンジョがあった。でも、なによりも、じつはオートに転向したのが一番良かったのだ。オートはリヴォルヴァよりも軽く、重量バランスも良い。グリップアングルもナチュラルだ。反動もマイルド。そして一番ありがたいのは、そのトゥリガープル。リヴォルヴァのトゥリガープルは長くて重い。初めは楽に感じても、グーイグーイと毎日500回も引き続け、一ヵ月もすると誰の腕でも痛みだす。それでも休まずに撃ち続けるとケンショー炎になるというわけ。グーイと引いてダンッ!これがリヴォルヴァなら、オートは、ピッのズッシャンというかんじ。このライトなトゥリガープルで指が疲労することは考えられない。反動も違う。リヴォルヴァは右腕直撃だがオートのスライドは緩衝装置みたいなもの。タマは、その反作用をスライドにぶつけて飛んでゆく。スライドはタマのキックを受けて後退し、スプリングがそれを柔軟に受けてくれるというのメカなのだ。だから、腕の負担はリヴォルヴァよりもはるかに軽い。豪傑のリヴォルヴァと知的なオート━━そういった表現がアメリカの小説に出てくるのも、そのメカニズムのちがいによるものだ。ともあれ、オートの優しいトゥリガープルと反動で腕の寿命が延びた。練習をすることが大好きなワシは、これで幸福そのもの。心配していたジャムは、コロムビアでは一度もなかった。38スーパー弾の造り方をジョン プライドから習ったのだ。 ジョンはナウリンを使ってビアンキカップで連勝中のチャンピオン。今、最強の男だ。ロサンジェルス ポリスで爆弾処理のプロだっただけに、タマ造りも慎重そのもの。ケイスのリサイズ、プライマーの深さ、クリンプの度合いなどなどを初め、ジョンはナウリンのチューニングからクリーニング、オイルのさし方までしっかりと伝授してくれたのだ。能力の高い友をもつとホント助かるちゃ。

♡ナウリン♡
新しいカノ女···。初めは、そこらのカスタム美人と同等のモノくらいに思っていた。来年はスプリングフィールドのカスタムを造ろうと決めていた。だが、いざ使いだしてみて、ナウリンのすごさに感動させられた。撃てば撃つほどに魅力を発見できる銃なのだ。今、一番のマッチカスタムという評判は間違いないのだと思った。わずか1.25パウンドという 驚きのトゥリガープル。 パワーファクター120でジャムしないという滑らかなパフォーマンス。それでいて50ヤードで2インチ以下のグルーピン。このスリーカードを揃えられるカップガンは決して多くはない。どうして、それはスゴイことなのか?オートのメカは、一見スィンプルだが、じつは複雑カイキの繊細そのもの。とくにマッチの精度を引き出すとなると、矛盾したモンダイに突き当たる。
☆トゥリガープルを軽くすると故障する。
☆パワーの低いタマはジャムしやすい。
☆精度を上げるとジャムしやすい。
カスタマイズにあたって、こういった壁がガンスミスの前に立ちはだかる。つまり、重いトゥリガープルをもち、命中精度の低い銃でパワフルなタマを撃てば故障は少ない━━というのがオートの基本的な性格なのだ。トゥリガープルを軽くすると、スライドが後退するショックでハンマーが落ちたり、フルオートになったりする。タマがパワー不足だと、スライドの動きがしぶくなる。命中精度を上げるためには各部をタイトにするが、そうなるとバレルとスライドのロックが解けにくかったりして故障する━━と、そういう事情があるワケだ。 ナウリンの内部には現代ガンスミスの粋が凝縮されている。バレルのロッキングやスライドの軽量化などが特に優れ、徹頭徹尾、入念そのものに造られているのだ。このナウリンは、去年までミッキーが使っていたものだ。調子の良い銃だったのだが、オーストラリア戦でジャムってミッキーの優勝が蒸発したというヤバイ経歴がある。たしかに、初めはジャムがあって焦った。だが、それも、マグの交換、タマの徹底研究、クリーニングとオイルのさし方などの勉強によって解決した。コロムビア特訓の後、ワシはナウリンを自分好みに変えはじめた。10本の指をみんな有効に使うため、パテ盛りによる拡張工事を展開した。撃っては盛りつけ、撃っては削りでとうとう、あのナウリンがこんな姿になってしまった。が、美顔よりも、知的な心だよ。一万発の練習後、もう手によくなじむ。

☆━━開戦!━━☆
···スタンバーイ······
!!ズダーン ダダンダンダンダンッ!!多重チャンネルの銃声が、するどくチャップマン アカデミーに響きわたる。オーストラリア、ニューズィーランド、ドイツ、イタリア、イングランド、ノールウェイ、フィリピン、そしてジャパンからも現代の豪傑どもが果敢な攻撃をかける。熱いロマンを求める男達は火蓋を切った。温度が騰がった。湿度も飽和状態。磁場が歪曲。濃厚な空気のなかで視界が屈折した。とうとう、世界一の拳銃大会が始まった。ワシは、胸を熱くしてこの日を待っていたのだ。イヤ···正直に言うと、あと二ヵ月の練習期間が欲しかった。ムーヴァーに挑戦するだけの技術が完成しないままに本番を迎えるハメになってしまったからだ。他の3イヴェントに関してはリヴォルヴァ時代のテクニックに磨きをかけて自信を持てる段階に達した。だが、ムーヴァーに対して、ほとんど無策のまま···いや、小さな策はあるのだが、それを習得していないのだ。ムーヴァーは12本勝負。その後半の20と25ヤードで撃つ24発、これが苦しい。この24発をトゥリガージャークしないで撃つことができない。コールドスタートだと、どうしても3発ばかり飛ばしてしまう。フリンチというガク引き。こいつが、撃っても、撃っても···いや、撃てば撃つほどに集中力を欠いてひどくなってくる。ナウリンという素晴らしいオートを武器にしてビアンキカップをロープぎわまで追い詰めたという実感はある。しかし、勝率はあまりにも低い。自己練習では3対7という劣勢で、 コールドスタートの模擬試合となると勝率ゼロなのだ。いくら元気があって、物事をポズィティヴに考えたとしても、この現実を観ると今年の勝利は可能性が極めて低いと判断せずにはいられない。犬が豹を襲うようなものだ。しかし、そこはチャレンジャーの強み。 負けても、犬には失うものが無い。思い切りよく 突進し、渾身の力を出し切るのだ。巧く相手の喉もとに食らいつけたら、互角のデッドヒートも夢ではない。そして、今年のワシの闘いから、来年の練習方法を 模索できる。オートによるビアンキカップ攻略法を確立するのだ。そうなると、日本銃豪トリオのケン、テツ、トモは難なくオートにスイッチできる。そう···、ビアンキカップを中心に一年を回して生きているジャパンの射撃バカ達。彼らもオートを使うことになりそうなのだ。やっと稼いだカネをぶちまけるようにパワーカスタムに注ぎこんだ末、今度はもっとカネのかかるオートに転向したいという銃道野郎達。そんな3人にとって、資金不足が一番深刻だった。のだが、あるとき、幸運な話が舞い降りてきた。WAの国本社長が、スポンサーになってくれるというのだ。若いとき、国本社長はアメリカに拳銃修行に行って頑張った。コルトのガヴァメントが好きでコンバットシューターを目指して腕を磨いたのだった。そのころの彼の胴まわりときたら、まるでコカコーラのビンのようにくびれて細かった。武勇伝も多かった。そんな彼も、常にカネの件では辛かった。だから、日本からビアンキカップに出るシューターの辛さや苦しみ、そして、めくるめくような感動もよく理解できる。エアガン会社の社長となれば、みんな銃が好きで、射撃が好きで、楽しい趣味の心をもった人だろうと、ワシは思っていた。たぶん君達もそういうイメージをもっていると思うのだが、それが大マチガイなのだ。たいていの社長は銃について知らないし、射撃もできない。考えることはカネモーケばかり。あるキッカケから、そんな業界に飛び込んだケイ(国本圭一社長) は、モデルガンの会社をスタートした。どの世界も新参は苦労する。騙され、叩かれ、苦渋をなめた。それでも彼は持ち前の押しの強さで耐え抜いた。その辛酸をわずか3行でしか書かないのは気の毒だが、それはやがて ということにして、とにかく、ケイという男はマグナブロウバックという究極のガスガンを世に送りだすに至ったのだ。ベレッタ、デザートイーグル、ガヴァメント、そしてウィルスン━━傑作の数々。銃が好きで、射撃が好きで、壮大なロマンの持ち主でなければ成せない業だ。
“イチローよう、 このベレッタを宣伝するのに協力してくれないか?”
ベレッタのプロトが完成したときケイはワシにそう言った。
“ケイ、 宣伝はいらないよ。これは宣伝なしでもガンガン売れるからさ···”
ワシは、そう答えたものだった。どんな不景気の時代でも、良いモノは売れてしまう。 良い品物にはファンが自然に集まってくるので宣伝はいらない━━ワシはそう思うのだ。そうして、今やWAの時代。成功をおさめてホッと一息ついた国本社長のその目に、ビアンキカップに挑戦し続けている日本人達の姿がとまった。
“オレも銃とタマ代には苦労したから、ひとつその分をだしてやろうじゃないか···オートを使うという事以外は無条件で···”
そんな有り難いハナシになったのだ。まず、ティームシャーツができた。このユニフォームで、イチローガン団も列強ティームに混ざってサマになる。最速のプローン集団という世界でのイメージがいっそう高くなりそうだ。さーて···試合、開始!パワー、全開!

☆BARRICADE☆
バリケイドにチェックイン。10本のウィルスンマグからROがアンモを6発抜き取ってプラの袋に入れる。あとでクロノグラフを通して弾速を測定するのだ。それでもし秒速1050フィート以下でブレットが飛んだら失格になってしまう。ワシのタマは平均で1180フィートは出るように造ったので心配はない。次に4枚のターゲットが配られた。その右下にシューター登録番号と名前、そして日付を書きこんでイニシャルを入れる。ムネがワクワクし、心臓がドキドキする。闘いの充実。闘いの不安。闘いの喜び。緊張した心を深呼吸で静める。バリケはワシの得意科目、メッタなことで失点はない━━と、いうのは去年までのことなのだ。オート一年生のワシにとっては手ごわい相手となっていた。ナウリンのシュラウドが太いのでバリケイドに対して垂直に銃を保持できない。そのためにナナメにした銃を人さし指一本で支えなければならないのだ。反動で暴れるナウリンをコントロールするのは容易ではない。とくに35ヤードが危ない、のだが、前回来たときにパテで角度を合わせてあるので楽になっている···ハズだ。でも、それ以外のステイジでは角度が合わないので暴力的な闘いを強いられる。バリケがつぶれるほど握りしめて、肘をしっかり内側にしめこんで撃たなければならない。今年は、グルーピンをタイトにするのでなく、10点ゾーンをいっぱいに使って満点でしのぐという作戦なのだった。ワシの名が呼ばれた。バリケ8本勝負の始まりだ。10ヤード、左。横を向いたターゲットをジッと見ながらコマンドを待つ。“スタンバーイ···” この緊張感がすごい。息をいっぱいに吸い、2割吐いて停めた。バルッとターゲットがこっちを向いた。シュゴッ、と、右手でナウリンを抜いて左手でシュラウドをバリケに固定する。予定の位置にピタリと決まってダットがエックスリングにのった。トゥリガータッチ。ダンダンダンダンダンダン···ナウリンは快調に吠えて狙点には六つの弾痕が見えた。ヨシヨシヨシ!まずは一本を獲った。細心に抜き、用心深く構え、そして大胆にトゥリガーを引く。元気があって、技術があって、それらに裏付けされた自信を感じた。オートを撃つという、ややの不安はありながらも負ける気がしなくなった。ワシは力いっぱいにバリケを撃った。48発、8本勝負を真剣に闘った。全弾が10点リングを貫いた。ナウリンとワシは、初戦に勝った。

☆PRACTICAL☆
クワッと目が明いた。 朝、5時だった。空白の意識に思考の展開が始まる。プラクティコォを撃つ······そう想った。想うと怖かった。ドック、ドックと血管を押し広げて生命の液体が体内をめぐり始める。ビアンキカップはパワーの勝負。とくにプラクティコォはそれを要求する。パワーとは、心身の力。判りやすくいえば、元気。どんな困難でも乗り越えてやるという元気な心、これが大切なのだ。元気は胆力を生む。それは恐れぬ気迫。つまりビビらない気持ちのことだ。自分を信じて、大胆に不敵に気丈に猛々しく襲いかかる━━それが心のパワーだ。そのパワーがあれば幸福に生きられる。勉強も仕事も、困難も、これで乗り切れる。その「元気」でワシはプラクティコォを練習し、9割の確率で勝てる技術を得た。巧くはなった。だが、まだ9割なのだ。プラクティコォは、練習で20連勝できないと本番では危ない。それを知っているからこそ、怖いと想ったのだ。ビビッている自分。強い自分。その二人が交錯してプレッシャーはあがる。時間はグイグイとすぎていった。そして、10ヤードラインに立った。ドキドキしていたが、落ちついてもいた。RO達とあいさつし、軽いジョークを言い、周囲の状況もよく見えた。ピカピカのウィルスンマグをナウリンに滑りこませ、ピチッとロックされるのを確認した。スライドを引いて離す。そして、ホルスタに挿した。ハンズアップ。 ···いいなあ··· この素晴らしい緊張感···そう考えるゆとりもあった。“スタンバーイ···” 息を吸って、少し吐いて留めた。2枚のターゲットがバルンと返った。フッと息を少し吐きながらナウリンを抜いた。 ダンッ、ダンッ、と一発ずつ撃った。 当たった。だが、中心からは外れていた。ダッダン、ダッダン···次は4発撃った。これも当たった。しかし、またしても2発が中心から外れた。失点は無い、が、弾痕の散りかたが正常ではなかった。10ヤードではテニスボウルに入るグルーピンを出せるのに、ここではソフトボウルなのだ。あがっている!···マガズィンを差しこみながら、それが判った。手が震えた。 次はウィークハンド。抜いた。ターゲットを狙う···その刹那、ズダンッ、とナウリンが弾かれるように吠えた。10点リングの外にボツンと弾痕が着いた。“あっ! あ━━━━━━━━っ···”ワシは心で長━━━い悲鳴をあげながら、あとの5発を10点ゾーンに撃ちこんだ。急流のような秒の刻み。翻弄と落雷。すべてが一瞬のうちに決定された。グワラグワラ ドッシャーン!その一発で、今年のカップは終わった。一瞬の油断。不注意。それで死んだ。

☆FALLING PLATE☆
三日目は、いよいよムーヴァーと対決しなければならない。昨日の失敗がパーフェクトの夢を砕いた。パワーは落ちていた。体力は充分なのに元気に曇るものがあった。もはや、ムーヴァーと向かい合っても超元気は出せないだろう。興奮も、震えもあるまいと思った。3種目を制覇した者にだけ、ムーヴァーへの本当の挑戦権が与えられる━━と、いうのがワシの考えだ。スリーイヴェントをクリーンして、いよいよ優勝をかけたムーヴァー撃ち。もう、絶対に外せないという震撼の世界。そこで受けるプレッシャーと闘いたいのだ。その希望がなくなった今、それでも元気を保てというのは無理解というもの。でも、とにかく頑張って撃とうと思った。だが、その前に倒すべき相手がいた。プレイトだ。楽な闘いではある。が、油断のならぬ伏兵でもある。一瞬の心の緩みを殴打してくるコワイ相手だ。ナメてはいけないし、恐れてもいけない。冷静に真剣に撃つのだ。練習試合では10連勝、それも危なげなくクリーンしている。慌てたり、焦ったりしなければ倒せるのだ。10ヤードのラインに立った。真っ白に塗られた8インチのプレイトがズラリと6枚ならぶ。それを6秒間で倒す。右端のプレイトを見つめてハンズアップ。“スタンバーイ···”息をつめた。ドック、ドック···。体内の奔流を感じる。落ちつけっ!と、心で叱咤する。“ヴォッ” 合図が鳴った。ナウリンを握ってザッと伏せる。初弾の的を捕らえる。ダットの静止を確認。指をトゥリガーに当てる。レットオフ!ズダッ、ダッダッダッダッダッ━━初弾は、2.8秒くらいかけて慎重に撃つ。あとの5枚は0.5秒ずつで倒していく。練習どおりに撃てた。弾痕もセンターに集まっている。好調だ。スーッと肩が軽くなった。よーしっ!この勝負、もらった···そう確信できた。15、20ヤードと確実な6連射で順調に撃ち進む。完璧なテクニック、充分な元気。そして自信があった。ナウリンも完全回転だ。注意深く、丁寧に、真剣に撃った。···あー、こんな強い心でムーヴァーを撃てるのはいつの日になるのだろう···そんなことを思ったり、ROにジョークを言ったりしながら25ヤードの6連射も終えた。自分を信じられたらパワーが湧く。自信があれば恐怖もない。恐れがなければ平静に闘える。その、自信が、ワシは欲しい。技術と元気で保証された自信を···欲しい。

☆MOVING TARGET☆
一辺が1mくらいだろうか。細い鉄の四角なワクがある。それが5ヤードの間隔をおいて4個ある。ムーヴァーのシューティンボックスだ。とうとう、ワシはそこに立った。宿敵のムーヴァーを撃つ時だ。昨日までムシ暑かったコロムビアは、今日になって一転、寒い。暗い空を黒雲が駆けめぐり、国旗がブロブロブロとイヤな音をたてている。ロープが千切れるのじゃないかと思った。陰湿なレンジを黒沢映画のような風が吹きすさんでいる。テントも飛んだ。···またも不運のムーヴァーか···そんなことを思いながら暗雲を見上げた。ワシの少し前にオーストラリアの優勝候補が撃った。彼は練習ではほとんどクリーンでき、それもミッキーに迫るようなタイトなグルーピンを撃ちだす。そのブライアン キルパトリックという男が撃つとき、何度か突風が襲ったのだ。走るターゲットは風で前後に大きく揺れ、瞬間的に停まったりもした。ブライアンは、3発も外した。呆然自失。悲しい視線が宙に浮いたブライアンを目前にして、ワシは声もかけられなかった。一年間の闘いに勝ち抜き、代表選手の資格を得て、やっと地球の反対側までやってきた強い男。それが突風の被災者になった。暑くても、寒くても、暗くても、雨が降ってもよい、が、風だけは困る。身体が揺れ、ターゲットも揺れるというムーヴァーは打倒不可能だ。そんな状況で、ワシはムーヴァーと闘う。しかし、心は静かで熱かった。“さあ、ムーヴァー野郎···勝負の始まりだぜい!かかっていくぜ!”そんなふうに大胆だった。不敵に落ちついていたのは、ここで勝てると思っていないからだった。弱気なのではない。それは、練習試合で勝ったことがないという根拠からくるものだった。自分の力量を知れば、過剰な期待も無い。元気と技術。そして自信···。この三つが揃わないと負ける。ワシには元気があったがテクニックがまだないのだ。 技術なしには自信も持てない。ワシを支えているのは、勝つまで闘うという決意だけだった。今は負ける、だが、いつかは倒す━━そんなアテもない決意だが、その意思の固さが弱気を吹き飛ばしていた。これが挑戦者の強みなのだ。不安も恐怖もなかった。今日という日、天変地異を味方にしてメッポー強いムーヴァー。それが、いかほどのものか━━投げ飛ばされながらも、それを観察しようという態度でワシは対峙した。拳法のスタンスで身体を据えた。両手を上げて呼吸をとめた。ターゲットが、ズワッと躍り出た。ナウリンを抜いた。ちょっと慌てたドゥロゥだったがエックスリングをすぐに捕らえた。ターゲットが前後にユサッと揺れた。“勝負っ!”トゥリガーを切った。ダンダンダンダンダンダン━━···やった!撃てた。一本目は奪った。こんどは左からターゲットが走る。銃はスラッと抜けた。
ズドッ、ドッドッドッドッドッ━━これも完璧だと思った。じっさい、10ヤードでは12発全弾がエックスを貫いていた。15ヤードにさがる。躊躇なくハンズアップ。だが風で身体の揺れるのが気になった。ターゲットが出た。ドゥロゥ、そしてポイント。すかさずトゥリガータッチ、ズダン、ダン━━!2発、右上をヒットするのが見えた。同時にフワッと身体が浮いているのを感じた。立て直すようにして残りを撃った。早くも2発を失った。20ヤードにさがって立つ。風が、横から後ろから、たたきつけるように吹きつける。バトルの場には砂塵が逆巻いた。壁も揺れた。すごい光景だと思った。拳法のスタンスで立ってもグラリとくる。少し待った。突風の渦は去った。ハンズアップ。ターゲットが跳びだす。テンポを落として3連射。それを4回くりかえす。練習では、ここでの初弾をよく外したのに良い感じで撃てた。なんと12発全弾を10点に撃ちこんでいたのだ。そして25ヤード。一番の難関で風が巻く。腕時計のストップワッチをみると、あまり時間が無かった。ムーヴァーは、7分30秒以内に撃ち終えないと失格になる。エイッ!覚悟して手を挙げた。ターゲットが待っていたように滑り出る。ナウリンを抜く。狙う。狙う、狙う···捕まらない!ふらつくなかで狙点にダットを飛び込ますようにしてレットオフ。4回の3連射。泳ぐように撃った。終わった。6発を外した。合計では、192発撃ち、8発を外した。今どきのカップで8発も外したらハナシにならない。2流だ。だが、その8発が10点リングに入っていたら一流の上に超もつく。そう!わずか8発なのだ!ターゲットは、そんなに遠くない!一生懸命に練習しよう!頑張るんだ!そう、想った。

イーチ