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2013年02月18日

★不発の回し蹴り★ 紫電の炎

市 (2013年02月18日 11:59) │Comments(11)語りのプラザ
 8月14日といえばサンフランスィスコも真夏のまっ盛りなのだが、キャリフォニアの乾燥した空気のせいでとても涼しい。海辺の霧を吸ってきた風はひんやりとして、まるで日本の深い秋を感じさせる。
 …なんだか薩摩の秋が懐かしいなあ…
 そんなことを想いながらダッジヴァンでエアポートの屋外パーキングのゲイトをくぐった。サンフラン空港から長い旅行をする場合、エアポートから3キロほど離れた駐車場を利用するのが安上がりなのだ。
 エアポートまで乗せてくれるシャトルバスはまだ1台も見あたらなかったので、ゆっくりと適当な場所を探していた。より安全を期して、夜間に暗くなりすぎない場所にクルマを停めたかった。
 駐車場のコーナーを3回ほど曲がったとき、70メートルばかり前方に男女が二人、不自然に立っているのが見えた。
 緑のボルボがあり、トランクが開き、そこに紅いワンピースの小柄な白人女が身を固くして立ちつくし、黒人の男がピタリと寄り添っていたのだ。
 男が走っても追いつけない速さにダッジを加速しながらふたりの横をかすめ、車窓から観察し男の左手に15センチほどの刃があるのを確認した。
 …ナイフだけならハンドルできるだろう…
 そう判断したので、30メートル離れた所でヴァンを停めた。
 “ヘイッ強盗!俺はもうポリスを呼んだからなっ!どうする気だ?・・・”
 と、大声で叫んだ。
 クラクションもビービーと鳴らした。
 こっちを見た黒人は、反射的にナイフを投げ捨てた。投げるフォームは小さかったがナイフは猛烈に飛んで、フェンスの向こうに消えた。力がありそうだ。
 “ヘイメーン! なに言ってんだよ、オレはなんにもしちゃいねえぜ。このレイディーに天気がいいなとアイサツしてただけじゃないか。それをなんで騒ぎやがるんだよ東洋人のクソヤローがっ!”
 と、激しい勢いで毒突きながらこっちに向かってくる。
 …どうしよう、こんなときは逃げるにしかずだが…
 そう、頭では考えながらも身体はもうクルマから抜け出していた。
 襲われていたのが女なので捨てておけないという気もしたが「クソの東洋人」という言葉にムカつきを感じ、その黒人がトレパンにTシャーツという姿だったので誘惑を覚えたのだ。銃の膨らみがまったく見あたらない服装だというわけだ。
 サンフランの日本町に住むどれだけの日本人が、隣町の黒人達の暴力によって被害を受けているか計り知れない、そういったことへの怒りもあった。
 黒人は汚い言葉を飛ばしながら身体を揺らし、ゆっくりと距離を縮めてくる。思ったより若かった。22才くらいだろうか。背は185センチ、体重は90キロを超えていそうだった。
 …デカイ奴にはケリ、後ろ回し蹴りだ。思いきり引きつけて胃か脇腹にカカトで蹴りこむのだ…
 そう考えている間に黒人は2メートルのところに来て立ち止まった。
 “ヘイ、ファイティンのかまえをしろよクソ東洋人、まさか話し合いで解決しようなんて思っちゃいないんだろ?それともカネでも恵んでくれるってのか?なんとか言えよクソタレ東洋人!”
 “俺はケンカができないからね、カマエも知らないのだよ。だがカネならある、あるけど犯罪者に分けるつもりはない。でも、殴られるのもイヤだな…”
 “サナバベッチ!”
 黒人は怒鳴りながらズイと右足からステップし、左の拳を放ってきた。ジャブもなしのナマのストレイトパンチだ。しかも外側からのスイングぎみなのであまい。相手の様子を見るために重心を後ろにした自然体で立っていたので、わずかにステップバックしながら上体を反らせるだけで黒人のパンチはとどかなかった。太い腕はブンと空を切って巨体が泳いだ。
 “オー、シェッ!”
 男はイラ立った。自分の失敗を分析する習慣などということからはホド遠い世界にいる無教養な男らしかった。
 …この分なら同じ攻撃をしかけてくる…
 そう直感したので、顔をグイと前に出して誘いながら身体の重心も右の前足に移した。とたんに黒人の肩が一瞬あがり、重いストレイトが飛んできた。それに合わせて右足で踏みこむ。湾曲しながら飛んで来る拳骨をヘッドスリップでかわしながら背を丸めて左のヒジを男の太い脇腹に叩きこんだ。グシッという感触がヒジに残るのを確認し右に跳んですり抜けた。黒人が巨体を起こすところに回し蹴りを入れようと左足を軸にして身構えた。だが、無言のまま黒人は地べたにくずれた。男はエビのように身体を丸めて痙攣した。カウンターで決まる肘打ちのパワーには肋骨3本を折る破壊力がある。
 “おい、動くな、動くと折れたアバラ骨が内臓に突き刺さって死ぬぞ。いま救急車を呼んでやるからガマンするんだ、いいな?”
 そう言うと黒人はしかめた顔で見上げた。地べたに倒れるのはチビの東洋人だと確信していたのに何が起こったのか判らないという表情だ。息がつまって言葉は出ない。
 “キミねぇ、1発で倒れたのは運がいいんだぞ、その後の回し蹴りを食ってたら内臓が破裂したはずなんだ…”
 そう言いながら爽快な気分で大きなチンピラを見下ろしていた。

 “サンキュー、ありがとう! 
 助けてもらえて感謝します、ほんとうにありがとう!”
 そう言いながら女が寄ってきた。
 “いえいえ、被害はなかった?”
 “だいじょうぶ、クルマのトランクを開けさせられたところにアナタが来てくれたので、なんにも盗られていないし身体も無傷です。ありがとう!”
 “あ、ちょうどシャトルバスが来たから一緒に行こうよ、行くんでしょう?エアポートの方に?”
 “ええ、でも、この人はどうします?”
 “シャトルバスには無線があるから救急車を呼んだらいいでしょう、被害届など出していたら飛行機に乗り遅れるし時間の無駄だからほっとこうよ・・・”
 そう言ってバスに乗った。よく見ると彼女は知的な美人だった。
 そして、これが悲劇の序曲だった・・・。
  


Posted by 市 at 11:59Comments(11)語りのプラザ

2013年02月18日

紫電の炎 

市 (2013年02月18日 01:27) │Comments(23)語りのプラザ
    ★誰だって、悲しい…★

 誰だって、いくつかの悲しい思い出を胸に秘めながら生きているのだと思う。
 そして、その思い出はふとしたことで鮮やかによみがえり、癒えかけていた心のカサブタをひきはがしてしまうことがある。
 ぼくはP7M13というドイツ製のピストルを見るたびに、あの血ぬられた悲しい体験を思い出さずにはいられない。
 それは、まったく日常的なことから始まり、想像を絶するような恐ろしいできごとにまで発展していった……。

これは若いときに書いた小説です。
続きを読みたい人は
「読みた〜い\(^O^)/」とコメントして
ください。>^_^<

  


Posted by 市 at 01:27Comments(23)語りのプラザ