最近のコメント
アクセスカウンタ
タグクラウド

2016年04月15日

スコーピオン

市 (2016年04月15日 23:19) │Comments(7)てっぽ記事
スコーピオン

“ええと、思い出はスコーピオンだけど、M84に挑戦しても良いですよ”

そーいって 膨大な『ベレッタM84 小説』のタイピングに挑んでくれたムラさんが旅立って1年が経ちますた。
そんなムラさんに、Gun誌1981年12月号に掲載されたイチローさんの『スコーピオン 小説』を贈るだす~♪
by マロンパ


スコーピオン

『スコーピオン・ショート・ストーリー』  
アメリカ中には何百というスワット・チームがあるが、スコーピオンを持ったチームはベカビルくらいのものだろう。なぜなら、このSMGはアメリカに輸入されたことがないし、持ち込みも禁止されているからだ。共産国の武器は買わないことになっているのだ。  
ベカビルには大きな刑務所がある・・・・・・小さな平和なタウンなのにスワットがあるというのも、この刑務所を意識してイザという時を考えてのことだ・・・・・・その刑務所には多くの面会者がやってくる。当然、面会者は身体検査をされるわけだが、ある時、3人の女が面会を申し込んだ。囚人はふだつきの凶悪犯だ。係官は怪しいと思ったか、女の持ち物をいつもより念入りに調べると、はたして少量ながら麻薬を発見した。ただちに女達を逮捕し、さらに乗ってきた車を調べたら、スペア・タイヤの下にこのスコーピオンがあったのだ。さて、ではどうしてそのスコーピオンがチェコからはるばるU.S.A.まで旅行してきたのか?  
それは1969年の10月2日、深夜のことだった。シスコから国道1号線を北に50マイルほど行った所の海岸に、2人のKGBエージェントがアメリカ製のゴム・ボートで上陸した。スタクトンに向かうソ連の穀物輸送船から夜陰に乗じての飛び降りた2人だった。2人とも英語は堪能でアメリカの事情に精通し、大量のヘロインとドル、そして1人はトカレフ拳銃、もう1人はスコーピオンをかくし持っていた。この2人の使命は、当時アメリカが開発を計画していたMXミサイルの性能とコンコードにある海軍の弾薬貯蔵所に原爆があるかないかの確認だったと言う。  
2人は海岸で茶色のブレザーコートとLeeのジーパンに着かえると、別々に分かれて行動を開始した。スコーピオンの男は、国道のカーブのきつい所に待ち構えて、大型トラックがスピードを落とした時後ろから飛びついて、そのままサンフランシスコに入り、ランバード・ストリートで飛び降りてユニオン・ストリートの方に姿を消した。もうひとりのトカレフは、スコーピオンのように長い間ボリショイ・バレー団にいたわけではなかったので、そんな離れわざを使えず、ダンキン・ドーナツをかじりながら朝になるのを待った。明るくなったところで国道に出て、親指を立てながらサンフランシスコに向かってゆっくり歩き出す。つまり、ヒッチハイクで堂々とシスコに行こうというシャレた考えだ。車は20分に1台の割で通るが、なかなか止まってくれるものはいなかった。2時間ばかり経った頃、ダッヂのバンが人影を認めてか、スピードをゆるめながらトカレフの横をゆっくりと追い越し、止まるかと思ったらそのままカーブの向こうに消えてしまった。「オー、ファック!」とトカレフは英語でわめいて中指を空中に突き立てた。怒っても冷静な男だった。  
「オイ、みたかジャック・・・」と、ダッヂを運転していた男は助手席のサングラスに言った。「ハァー、あの腹の出っ張りでしょう?ベルトにオートをさしてますナ。たぶん.45か 9mmあたりじゃないかと思ってたところですよ。上着がちょっと厚いのでわからないけど、大型には間違いないですナ」  その2人は日系人だった。しかも日系人にはめずらしく、GUNには目のない連中で、射撃の腕も決して悪くなかった。
「あの男をひろったやつは、うまくいってもまる裸にされるか、下手したらBANGだな・・・」と運転手はつぶやいた。「やりますか、ストリート・クリーニングを・・・」ジャックと呼ばれる、苦みばしった顔の男は静かに言った。「仕方なかろう、見殺しはイカンものナ・・・」  ダッヂの男は車を止め、黒のガンボックスから銀色に輝く6インチの大型リボルバーを取り出す。ヘビーなスラブ・バレルが付いた見事なハンドガンだった。男は素早くシリンダーをひらいて+Pのホローポイントを抜き取り、かわりに緑色のブレットが付いた.357マグナムを6発装填する。「KTW・・・やっぱり、ポリスには届けないのですナ・・・」と、ジャックは低くつぶやく。「ウン、道路のこちらからやつをヒットすれば、タマは1マイル彼方の海底に落ちるって寸法さ・・・ポリスとのゴタゴタはメンドーだからな」  運転手とジャックは車から飛び降りるとカーブの少し手前にある路肩の岩に身をかくして待った。  待つほどもなくトカレフは視界に入ってきた。1号線の海側を疲れたような足取りでやってくる。その距離30mに縮まった時、ジャックが岩かげから出て怒鳴った。  「ヘイ、ライドが欲しいんだろ、乗せてやってもいいゼ」  トカレフはギクッとして声の方を見ると相手は丸腰だ。ちょっと安心した。「そうか、助かるゼ、さんざん歩いてクタクタさ、ところでお前さんひとりかね?」「そうさ、その前にちょっと上着のボタンを外して内側を見せてくれないか、俺は心配性でネ、もしGUNを持っているんだったら捨ててもらいたいだけなんだ」「気の毒だが、俺も心配性なんだ。これなしにはやってけないんだな。それにこれさえあればお前さんのあのクルマもいただけるしね」と言いながら上着のボタンを外しトカレフを抜きかけた時だ、ジャックから数m離れた岩の下の草むらで凄まじくカン高い爆発音が起こった。プローンに構えた運転手の6インチが吠えたのだ。トカレフの鼻のあたりにポツリと穴があく。テフロンコーテッドされたソリッドブラスのタマはトカレフの延髄を破壊させながら、はるか海の彼方に飛び去った。証拠になるタマは回収不可能となったわけだ。  倒れたトカレフを目立たぬ草むらにころがした2人は所持品を検査する。「約束通りGUNはターゲットの役をしたオレがもらいますよ、ちょうどトカレフの特集記事を作ろうと思ってたんスよ」と、ジャックはトカレフの土をぬぐう。「オイ、この白い粉は麻薬じゃないか?」バッグから取り出した包みを開いた運転手が驚いた声を出す。「こりゃ10キロはあるぜ・・・ペッペッ、まずいもんだな。こりゃ、麻薬にちがいないぞ、ソーレッ!」と、包みを次々に空に投げる。「ハイヨ!」とジャックがおどけてパイソンをショルダー・ホルスターから抜きざま片っぱしから撃ち砕く。真っ白い粉が粉雪のように海面に舞った。10kgのヘロイン・・・残念ながら、この2人はその価値と売り方を知らなかったのだ。もし、知っていたら、今頃は、サンタバーバラにシューティング・レンジ付きの別荘を持ってハッピーな毎日を過ごせたはずだ。そのチャンスを逃がしたために2人は今だに忙しいガン・レポーターとして毎月を〆切りに追われ続けているのである。  

ドハハハ・・・ここまで書いたら、スコーピオンの経路については全くワシの創作であることが分かっちまったでしょうが、実はポリス・デパートメントでも調べがつかないので、勝手に空想してしまったわけです・・・。なに?ついでに続きを書いてしまえだって? イエス・サー!  

一方、トラックに飛び付いてシスコ入りを果たしたスコーピオンは、ユニオン・ストリートでシャレた服や帽子、靴などを買い揃え、その足でカー・ディーラーの多いバンネス・ストリートに出てフィアットのスポーツカーを購入する。フィアットなどと言うチープなクルマに憧れるところがKGBの貧しさと言うかドンくささだが、日頃は冷静に任務だけを遂行するスコーピオンもアメリカの物資の豊かさをまのあたりにして「オレも条件さえ良ければ亡命してもいいかもしれん・・・」などといった考えがチラリと頭のどこかをかすめる。まず麻薬ルートとコネクションを持ち、マフィアとの関係をつける。そこで大量のへロインと引き換えに、まずコンコードの海軍基地にある核兵器の秘密をいただく──。これがとりあえずスコーピオンがとるべき行動だった。まず、どの店に行くかということなどは、すべて本国で調べがついていた。スコーピオンはオファレル・ストリートにある、しけた感じのバーに入った。そこには顔面をヒゲで埋めつくして、人相も分からなくなった、これまたしけた感じのバーテンダーがいた。名をカールと言い、マフィアの組織の末端にバイ菌のようにこびりついている男なのだ。そして、自我だけはやたらに強く、自分はいつでも組織から離れて独立できるというのが口ぐせで、拳銃の上手さと知識を自慢し、たいして美人でもない金髪のぎすぎすした女房をすぐにひざに抱いて他に見せびらかすことくらいしか能のない男だ。KGBの調べでは、その拳銃の腕にしろ、すぐにあせって地面を撃ち、知識と言っても分解と組み立てくらいという小学生なみであることが分かっていた。  「アンタがカールだね。ハジキが上手いってウワサだゼ」とスコーピオンはくすぐる。  「ソーでもないけどよ、ムカシ軍隊にいたしね・・・」と、単純なカールはたちまち打ち解ける。  「ところで、ヤクを10キロばかり持ってるんだがね。アンタの上の方に伝えてもらえないか、お礼はアンタにもするよ」  「オーット、ダンナ。冗談はいけませんや。アンタ新顔ですかい?でも、ホラ、あそこのスミにいるアル中みたいな男を知ってるでしょう。半年ばかり前にサンディエゴPDからSFPDに移ってきた麻薬Gメンですぜ。アイサツでもしたらどうですかい。それくらいはコチトラにも分かってるんですぜ」と小声でアゴをしゃくる。  「そうか、ではアイサツをするから、他の客が入ってくる前に店を閉めちまいな」と言いながらスコーピオンを取り出したKGBエージェントは、サイレンサ-をカチリと装着したかと思うと、バーの隅でグッタリしている男の左腕を無造作に撃った。プルルルという音がしたかと思うと天井にケースが当たってバラバラと落ちた。撃たれた男はアル中とはとうてい思えない素早さで横っ飛びに飛んでアンクル・ホルスターからスナブ・ノーズを抜こうとした。とたんにスコーピオンが長々とバイブレイトして、男ははじかれたようにひっくり返る。あまりのことにド胆を抜かれたカールの頭に、落ちてきたケースがコチン コチンと当たる。  「いや、アンタの言うとおり、やつはポリ公さんだったようだ。だが、オレは仲間じゃないのがこれで分かったろう・・・」  カールはふるえる手でマフィアのチンピラに電話し、そのチンピラが幹部に知らせてから、事は急速に運ぶ。  「かくしたって仕方がないから言うが、俺はある国の諜報員だ。実はヤクとの引き換えに、ある情報が欲しいわけだ。ヤクはある所にかくしてあるが、明日でも渡せるゼ・・・」  スコーピオンの取り引き話を聞き終わったマフィアの幹部、名をナザリーノというさすがにドスの効いた男だった。いきなり胸の奥からベレッタの.380を抜いてスコーピオンに突き付け、KGBのGUNを奪うとゆっくり言った。  「御苦労だったが、アンタにはセメント・シューズをはいてもらう。タルの中にセメントを入れて両足を突っ込んでおくと半日で固まる。そしたらシスコから45マイル沖に出かけるわけだ。そこまで行くと海溝があってな、底なしに深いんだ。そしてドブン・・・。我々を裏切った仲間は、そして敵もだが、皆あそこに沈んでいる。たいていの連中は放り込む前に頭に1発ナマリだまを入れてやるが、アンタのためにはそのナマリもケチらせてもらうことになる。イヤ、へロインなんていらんよ。それよりも、ウチのドンときたら大の赤ぎらいでな・・・愛国者なんだよ、ウチのボスは・・・」そういうわけで、スコーピオンもアッサリと消されてしまい、ケチで臆病なカールは、店を一軒持たせてもらえるという約束で、Gメン殺しの犯人として自首し、その妻であったニーナがチェコのSMGスコーピオンを自分のクルマのスペア・タイヤの下にかくしていた・・・・・・というわけでした。(完)

スコーピオン




同じカテゴリー(てっぽ)の記事画像
来年の世界戦で使うアイアンサイト銃
今月のSATマガジン
M&P 22口径 鋭意改装中
奥の手を出す!!
ストライク インダストリィのグリップとダット
TIPPMANN M4-22
同じカテゴリー(てっぽ)の記事
 来年の世界戦で使うアイアンサイト銃 (2021-12-10 12:00)
 今月のSATマガジン (2021-11-27 14:39)
 M&P 22口径 鋭意改装中 (2021-11-25 11:57)
 奥の手を出す!! (2021-11-12 22:58)
 ストライク インダストリィのグリップとダット (2021-11-12 10:50)
 TIPPMANN M4-22 (2021-11-11 09:58)

Posted by 市 at 23:19Comments(7)てっぽ記事
この記事へのコメント
地震後の慌ただしいなかで、こういうことしているマロンパは大した野郎だね(^o^)
Posted by 市 at 2016年04月15日 23:27
とるーぱーさんの事を考えてたら、今度は大阪も揺れた。また震度6強が熊本を襲った。
津波注意報が有明にでた。

マルパソ兄ぃやんは、『避難中だよ~』と。無事を確認。

被害の大きい益城町役場の前に地割れができて、支援物資が荷崩れしたりしてます。

まずは避難と、支援体勢の見直しを!

阪神大震災では、会社社員の安否確認ができず、マウンテンバイクをありったけ買って、社員手分けして避難所や病院を回って、安否確認と物資を届けたのを思い出しました。
自家用車で親戚の安否確認に行ったらダメよぉー。自衛隊や消防の支援車両の邪魔だから。バイクか自転車よ!!
Posted by まう@東大阪 at 2016年04月16日 02:35
このお話が、確かGun誌におけるイチローさん、最後の記事だったような気がします。
パイソンを持ったジャックタクボとERストラウプのグランドマスター!コクサイのモデルガンキットが出た時に作りましたね〜。
この後一か月、「イチローのいない年末」を過ごし、デベルカスタムでコンバットの表舞台に登場したんですね〜。当時、多感なローティーンだった、いわゆる「ぶわぁかもぉのぉ」世代は毎月27日を一日千秋の思いで待っていたんですよねぇ。
それが今では、こうして毎日ブログでコンタクト出来て、何かあるとお互いを心配し、励まし合えるなんて、イイ時代になったと実感します。
熊本の皆さん!まだまだ余震が続いてますが、頑張って下さいね。
私に何が出来るか分かりませんが応援して行きます
Posted by chatter box at 2016年04月16日 09:52
 TROOPERさん本気で合唱。自分が入院してても自殺しててもチットモ不思議でないからです。ほんのチョット運が良かっただけ、”自分の努力”だけだなど本気で思えない。自分は(周囲に)”生かしてもらってる”。自分は東日本大震災の時に続き、明日から今の仕事で官公庁と共同輸送作戦に服します。感謝してもらう必要は無し、表彰とかも必要なし。自分の魂が叫ぶとしか言いよう無し。LE現職の時、出世の役にも立たない、多数の者から変人扱いされてた特殊部隊志願した時も同じ感じと今やっとわかります。マァ給料もらってやるわけですけどね!熊本行ってきます!
Posted by 佐伯 at 2016年04月16日 23:11
マロンパさん、楽しく読ませていただきました。ありがとうございます。
地震は怖いです。余震が続き心労がたえないでしょうが身を守るのを最優先にして、がんばってください。(^^)
Posted by ちびゆき at 2016年04月16日 23:35
佐伯よ、太平洋の対岸から見守っている、ワシの老骨の分まで頑張ってくれ。市
Posted by 市 at 2016年04月17日 01:58
ちびゆきさ~ん(^〇^)/
読んでくださりありがとうございますた~♪
これからもT-16とイチローさんの活躍を
一緒に観戦してくだちい~っ♪
(#・∀・)人(・∀・#) トゥギャザー

佐伯さ~ん(^〇^)/
おかへりなさ~い♪
官公庁との共同輸送作戦お疲れさまですた~♪
もしもスケジュール的にOK牧場ならば、
ちょいとお休みくだちい~♪
(^O^)/ グッジョ~ブ

♪想い出に降るぅ 雨ェもあるゥ
恋にぬれゆくゥ 傘ァもあるゥ~♪

佐伯さんは「大下八郎」と
名前を換えるベキではナインだすかね~♪

by 佐伯さんこそ「 大した野郎」だと想うオトコ
Posted by マロンパ89 at 2016年04月20日 21:09
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。
上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。