TACTICAL LIFE

おはよう(^｡^)/

胡露那軍との戦争による戒厳令の中、退屈しのぎに1980年12月号のGun誌に載せたストラウプの記事など読んでいただきませうね。

記事の書き起こしと紙面の複写はマロンパ博士が時間をかけてやってくれました。
アリガトリィー♪



　　　☆アール・ストラウプ☆

ジャックと私がPPCクラブに入ったのはもう2年ばかり前だが、そこのシューターの中でもメタメタに上手いウイットニーという名の男が居た。そのすさまじい集中力と完璧なリズムからスットン、スットン、スットンと撃ち出すタマは50ヤードから10リングをズボズボと撃ち抜き、常に590点以上の得点を出せるというグランド・マスターの姿を私は生まれてはじめて見たのだった。私はホレボレとなってしまい、エヘヘヘなんて笑いながらウイットニーにしつこくつきまとい、ついには友達付き合いをするまでになった。私は恥ずかしがり屋で内気なので、人と話をするのも下手なのだが、ウイットニーのような崇高というか、可能性いっぱいに鍛えあげられた男の姿を見ると、ただひたすらに近づいて何かおこぼれでも良いからもらいたくなるのだ(もらうといっても物ではなく、精神的なあり方や態度を学ぶということよ)。ウイットニーは、ピードモント・ポリス・デパートメントのピストル・インストラクターで、スタクトンのPFIC(ポリス・ファイアーアームス・インストラクタース・コース)の卒業生だった。つまり私の先輩なのだ。ピードモントは、オークランドの近くにある小さな町で、署長からして大のコンバット・シューティング・ファンであり、S&WのM66(4インチ)を制式としているカッコ良いPDだ。射撃コースもPPCはとっくにやめて、FBIのTRCを採用している点では珍しいPDだといえる。そのウイットニーもステンレスのM65・PPCカスタムを愛用していた。彼が持つS&W・M65カスタムは一段とまばゆく輝き、私はもうガマンできなくなってしまった。そのカスタムを作ったガンスミスを紹介してもらって会いに行く。ガンスミスの名はアール・ストラウプといい、シスコのあたりではよくその名を耳にした。「私はグランド・マスターになりたいのです。ですから、そのためのM65カスタムを2丁作ってもらえないでしょうか・・・・・・」「そうか、しかしワシも頑固者だから、気に入らんかんじのカスタムは作りたくないゼ・・・・・・、いったいどんなようなカスタムが欲しいんだね」ただM65カスタムといっても個人の好みに合わせて作るため、内容的にはいろいろ異なってくるので自分の意見をはっきり持っていないと困ることになる。「まずステンレス・バレルでサイドがフラットなやつ・・・・・・、スラブ・バレルといいますか、あれをつけて、サイトはボーマーでなくアリスト・クラットのオリジナルを・・・・・・そう、ケイク・デイビスのアリスト・クラットではなく、オリジナルの方です。ハンマーはシングル・アクションも使うので、デホーンにしないでむしろワイドなターゲット・タイプをつけて、そのかわりトリガーは一番細いものを使って、グルーブ(溝)を完全にグラインドして、ウンとスムーズな角の無いコンバット・タイプにして下さい。トリガー・ストッパーはつけないでいいです。パーツはすべて研きなおして、リバウンド・スプリングは一回転と半分カットして、ダブル・アクションのトリガー・プルはミス・ファイアのないところまで軽くしてみてください。それからもう一丁の方ですが、これはマッチ用としてではなく実用的カスタムとしたいので、サイトはステンレスの特製をお願いできませんか。他のサイトよりちょっと小さめで、リア・サイトも引っかかりのない小さなもの・・・・・・ああ、イライアソンが良いですか、ゴールド・カップやパイソンに時々ついているあれですね。けっこうです。それとフロントサイト・ガードも小ぶりなものとして、バレルをややうすくし、ハンマーとトリガーは他のものと同じですが、トリガー・プルはファクトリーのままに重くして下さい。なにしろ実用的なGUNなので、CCIのプライマーだろうがなんだろうが発火させる能力を持たせたいので・・・・・・。これはぼくの理想の6インチ・カスタムとして長くかけて考えたものですから、ひとつ、美しいやつを作ってもらえませんか・・・・・・」などと時間をかけて頭の中にあるGUNを説明したら、アールは、ずり落ちたメガネの上からジローリと私をみつめながら、「これが40年ばかり前だったら、日本人のためにGUNを作ってやるなんてトラブルだったろうが、今ならノー・トラブルだろうな。ヨーシ、50ヤードから全弾Xリングに入るだけの性能を持ったカスタムを作ろうじゃないか、出来たら電話するよ」2週間ばかりたった頃、アールはカスタムが仕上がったことを知らせてきた。待ちに待ったPPCカスタムだから仕事を放って受け取りに行く。やはり、それは美しかった。にぶい銀色の長い銃身はサンゼンと輝き、重すぎもせず軽すぎもせず、3段階クイック・チェンジの出来るリア・サイトが付いたアリスト・クラットのリブ・サイトも似合っていた。本命は、さらにそのあとに仕上がってきたアール・ストラウプ、オリジナルのステンレス・リブ・サイトがついたM65カスタムだ。これはサイトとバレルが両方ともステンレスなので一体感があり、より軽快に見えた。冬など、オーバー・コートの内側にこの.357マグナム・ロングヒッターを忍ばせて歩く船員姿のビル・ラングロイが目に浮かぶ。かっこ良いだろうなぁ！私もポリスの資格をとったら、これをさして歩くのだ、いや、やはりアンダーカバーとなって、厚手の皮ジャンパーの下にビアンキのX-15をつけて、それにぶちこんで・・・・・・、暗い灰色の都会の冬・・・・・・、キラリと銀の光が一閃してM65カスタムが抜かれる・・・・・・、よしっ！かかって来いチンピラめ、オレは撃ちたいんだ、銃口をこっちに向けて、オレのグランド・マスターに火を吹かせるだけのイクスキューズをつくってくれよ・・・・・・。ウーン、イイッ、イイッ！ロマンがいっぱいだ。なぁんちゃって、日頃エラそうなこと書いてるイチロー、このとおりひと皮むいたらかなり幼稚というか大人の世界に毒されてない面があるんだよ。ともあれ、生まれてはじめて自分の好みを入れたM65カスタム。私の熱い夢をそれに託して、“グランド・マスター”と命名した。それ以来、私はカスタムに凝ってしまって、いろいろなものを考えてアールに作ってもらうことになった。






ランサムのマシンレストにグランドマスターをセットし、50ydからその命中精度をチェックするテッド今井



ウイットニー教官


FBI教官のジーンジョーンズ(右)
左はウイットニー警察教官














☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


全体がシルバーに輝くそのGUNは、
デザインが直線的でありながら、
どこかやわらかで、
拳銃にありがちなあの凶暴さとか、
冷たさを感じさせなかった。

なめらかなトリガーをジリジリと引くとハンマーが生きもののようにせりあがってきて、指先に伝わるその感触は、もはや鉄と鉄のすれ合うものからは程遠いものだった。シリンダーはロックされ、あと1ミリでもトリガーを引けばハンマーは落ちる。
.357マグナムという世にも凶暴なカートリッジのブレットは、強烈なリコイルを残して50mをフラットに音より速く飛んで、敵の頭がい骨を苦もなく破って突入し、その中の脳みそをベランダいっぱいまき散らすことはあきらかだ。

ああ、グランド・マスターよ、
お前がそんなにおそろしい力を持っているなんて、私にはとうてい信じられないことだ。

━━スタインベック・・・の読者━━