2020年01月14日
ブラックウィドウ物語
市 (2020年01月14日 00:10)
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│てっぽ
背を向けて眠っている女には、妖艶な魅力があった。イチローは、その肩を優しく引いて自分の方を向かせ抱擁する。女は黙ってイチローの胸に顔を埋め、カンフィーそうに眠り込んだ。
結婚したものの、翌日には夫に先立たれて孤独になったままのブラックウィドウであった。
その不遇な身の上を不憫に想ったイチローは、163号の妾として引き取って面倒をみている。
知的で美しい・・が、気性の激しい女であった。
とはいえ、イチローのためならば死をも厭わず仕えるというマインドセットの持ち主でもあった。
イチローは、そういった彼女の気持ちを汲み、さらなる成長を促すようにスライドにアクロを載せてやった。
そして、薄化粧のひとつも施してやろうと考えていた。
まずは、鉄の肌が露出したアクロカットの部分を黒染めにする。このままでは錆びてしまうからだ。
丹念にガンブルーを塗ってやる。
主人の愛情を感じ、悦びにしのび泣くブラックウィドウの姿は悩ましかった。
内装も見直しされた。
内臓の1つ1つが吟味される。
ハンマーは最高なダグケニへと変わる。
実銃のグリップにはスティールインサートがあるが、エア式にはこれが無いという噂だ、が、イチローは確認できていないので誰かに知らせてもらいたいと願っている。
鳥賀は長すぎたので前をカットし、微妙なカーヴもつけてやる。このきめ細かな愛情に彼女は人知れず涙するのだ。
ダストカヴァー部には美図方面から取り寄せたカーボン幕を貼る。これは米国で入手できるものより質が高い。
銃把は、最も美しいものを別な江巣亭相から移植する。
2020年の新春、新鮮な姿となったブラックウィドウは、その美しい肢体を白日のもとに晒すこととなった。
優しい主人も満足げに微笑する。
まずは20mから数発の射撃。
相変わらずの精度を彼女は保っている。
これがブラックウィドウの近況でアル。
完
by 撃津文豪之助
追伸
ほんとは彼女のことを もっと日数をかけて妖艶に描写したかったナ。